香澄はバイトに明け暮れ、愁がそれに合わせるようにして、二人で過ごす時間を作っていた。

愁は、香澄が入学した後、部活を辞め、バイトを始めた。部活が、サークルや同好会ではなく体育会の部活であったため、バイトをする時間もなく忙しかったのも理由の一つだ。

夏休みも長期合宿。三年生になればもっと忙しくなる事を見込み、愁は退部を決意した。

生活費や学費は親の仕送りがあったが、部活の付き合いなどで出費がかさんでいた事もある。

毎日毎日働き詰めな香澄の身を案じ、夕飯やデート代は自分が出そうと考えた事もあったようだ。

奈津美はそう聞いていた。

そんな仲の良い二人を、奈津美は微笑ましく思っていた。

香澄が卒業したら、二人は結婚するものだと、奈津美は疑いもしなかった。そう、“結婚するまでは”と、清き付き合いを続けているのだから。



あれは、夏休みも半分が過ぎ、九月に入ったある日――――





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