Second Moon Ⅱ~六番目の月17~
「ん、ありがとう」
香澄は、振り返りながら穏やかに微笑む。奈津美は、その笑顔につられたように笑みを浮かべた。
「なに?…あたし、何もしてないよ?」
「ううん、何だか元気でた」
「ハハッ……何か、あんた変わったね……」
……香澄…ちょっと強くなった?……
……司さんと出会って……だよね?……
……毒舌ミナガワのせいじゃないよね?……
奈津美は、“ミナガワ”と言いそうになり口をつぐむ。今日の事に限らず、司に出会ってからの香澄は、笑顔が増え、明るくなったように感じていた。柔らかい印象になったのは、ヘアスタイルが変わった事もあるが、それだけではないだろう。
「何が?」
「え?!…あ、強くなったなと思ってさ、ま、前からあんたは強いけど……」
…………二年も愁先輩を思い続けたんだよ…………強いよ…………
…………一方的に別れてくれって言われたのにさ…………
…………真っ直ぐって、強いよ?……けど、折れやすい……
…………だから心配なんだけどさ…………
信じていた愁に裏切られる形になった時、香澄は簡単に折れてしまった。奈津美は、そんな香澄を知っているからこそ、気がかりなのだ。
「強い?そうかな……奈津美に助けてもらってばっかりだよ?」
香澄は、自分に自信が持てたのかもしれない。奈津美や司がいてくれることが、転べば抱き留めてくれる存在がある事が、香澄の中の何かを変えているのだろう。
「香澄はもっと言いたいことを言っていいと思うよー、罰(ばち)は当たらない!!…何かあったらあたしがいるし!…あたしは世話焼くの好きだし……たぶん世話好きな“おばちゃん”になると思うわ!……」
奈津美は、香澄の肩に手を乗せ、言い切った。
「良かった奈津美が奈津美で」
「は?…あんた、たまに分かんないこと、言うよね」
奈津美は不思議そうに香澄を見つめる。香澄は、はにかむ様な笑みを見せた。
「はははっ」
……何だか……心が軽くなった気がするよ……
二人は門の前まで一緒に歩き、香澄は海堂の車に、奈津美は晃の車に乗り込み、大学を後にした。
-17-